第176回「やすらぎ修行会」プチ法話 2026/1/21
高校2年の夏休み、理由は覚えていませんが、とにかく入魂の「読書感想文」を書いてみようと決心しました。相対する作品は大岡昇平著『野火』。 敗色濃厚なフィリピンの戦線において、部隊からも病院からも排除された主人公田村は、病と飢えにさいなまれながら、野火が燃え広がる山野をひとり彷徨います。絶望の中でも生への執着は消えることはない。あるとき猿の肉だと口に入れられた干肉を人肉ではないかと思いつつ食べてしまう…。極限状態における人のありようが記された作品です。 一ト月の間『野火』を何度読み返したでしょうか。生死の境をさまよう追い詰められたぎりぎりの世界と向き合い続けることのしんどさ、加えて物語の核心が見えてこないもどかしさ、なかなか考えがまとらないじれったさ。大切だと思う部分に蛍光ペンで線を引き、そして書き出し、分類分けをしました。そうすると厚い霧の中に隠れていた物語の筋が徐々に見えてくるよう感じました。 夏休みも終盤、「えいっ」と書き始めると、自然と文が紡がれ筆がどんどん進みます。少々手直しをして数日で完成。すべてを出し切った充実感が体を満たしました。大きな力を頂きました。 今は生成AIの出現により、「読書感想文」という宿題も成り立ち難くなっているとのこと。「『野火』の感想文を2000字で書いて!」とお願いすればあっという間に無難な感想文が出来あがってしまう。とても便利です。でも脳から汗水たらしてうんうんうなって「創って」いく、その過程で心が深まっていく。そんな貴重な経験を手放してしまうのはもったいないですね。